安部龍太郎「レオン氏郷」の歴史小説を読んだ。「レオン」の名はキリシタンの洗礼を受けた名前で、本名は「蒲生氏郷」である。この氏郷は、故郷の滋賀県日野町に生まれ育ち、織田信長が惚れこみ、豊臣秀吉がその器量を畏れた武将・蒲生氏郷の生涯を描く長篇小説である。
あらすじは、信長に見出されて娘婿(冬姫)となり、その薫陶を受けて武将として成長する蒲生氏郷。世界とわたり合える国をつくるために天下統一を急ぐ信長の志を理解し、その実現をめざして邁進していた氏郷だったが、長島一向一揆での惨劇を目にして、心が大きく揺らぎ始めていた。信長亡き後、その遺志を受け継ぐと思われた秀吉に従い、数々の合戦で功を立てた氏郷は、日野6万石から伊勢の松阪20万石に、その後文武に秀でた器量に危機感を覚えた秀吉が奥州会津に転封し、その後加増されて百万石の太守になる。しかし、秀吉が私利私欲にとらわれていた事実を知り、志を遂げるために独自の道を歩むことを決断したのであった……。茶人やキリシタン大名としても知られている「蒲生氏郷」は、伊達政宗の茶会の椀に毒が塗られ、それによって体が弱っていったとの説が有力である。京都の氏郷屋敷で文禄4年(1595年)2月7日、40歳という若さで死去。京都紫野の大徳寺の塔頭・黄梅院に葬られた。蒲生氏郷の人生を骨太の筆致で描いた力作だった。もう十数年前に佐竹伸伍の「蒲生氏郷」を読んだことがあったが、改めて「蒲生氏郷」の偉大さを実感したし、もう5年~10年長く生きていたら、その後の戦国時代は大きく変わっていたであろうと推測もした。
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