2015年9月29日火曜日

「NORIN TEN」

1960年代、世界の食糧危機が起こった時、インドやパキスタンの人々を飢えから救った小麦があった。その小麦の基となったのは「NORIN TEN」(小麦農林10号)と呼ばれた、日本人が育種した小麦だった。 この「NORIN TEN」を作ったのは、育種家である稲塚権次郎(1897~1998年)。今から80年前の昭和10年岩手県立農事試験場で育てられた。
この物語は、今では世界の小麦の70%以上の基となった「NORIN TEN」の育種者、稲塚権次郎の愛と苦悩と葛藤を描いた映画である。 明治末期、貧しい農家の長男に生まれた権次郎が、貧しい農家を救うためには、美味しくて収量が高い米を作ることが大切と、育種家の道を邁進し、東京帝国大学農学実科を卒業。そして秋田県農事試験場陸羽支場で、最初に「陸羽132号」の品種選抜、「水稲農林1号」(これが後に「コシヒカリ」となる。)の育種に取り組んだ。その後実力を買われ岩手県農事試験場で小麦増産の国家的プロジェクトに加わり、次々と小麦の新種を開発。そして昭和10年秋、ついに小麦農林10号=「NORIN TEN」を完成させた。これが戦後、GHQの米農務省関係者に持ち帰られ、アメリカやメキシコでこの「NORIN TEN」を基に新種が生み出されて小麦の収穫高が飛躍的に増加した。この新種の種をインドやパキスタンに送られて食糧危機を救ったと、言うことである。
この映画をみて日本の農業が苦境にたっている中で、世界の小麦を育てたのは日本人であったことをはじめて知ることができた。すごい人だったと改めて感銘を受けた。また、権次郎さんのひたむきに、真面目に決して諦めない執念にも感銘を受けた。 これは大阪梅田の「シネ・リーブル梅田」で上映中。

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